私の仕事がなくなるとき|仕事の価値、本質、業界の未来像を浮き彫りにするメディア

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人工知能の発達により生まれる、今はまだない新しい職業とは何か

人工知能の発達により生まれる、今はまだない新しい職業とは何か

たとえば、iPhoneが日本で発売されたのは2008年ですが、その5年前の日本はフィーチャーフォンの全盛期で、5年後のスマートフォン時代の到来を予想できる人はいませんでした。
つまり、人工知能の急激な発達によって今から5年後に何が起こるかを想像することすら、私たちには難しいということです。

近年、人工知能の開発企業は、SNS運営会社との業務提携を積極的に進めています。これは、たとえば、社員ひとり一人のパーソナリティデータ(過去のメール、ブログ、ソーシャルメディアでのつぶやきや投稿など)を蓄積管理し、人事部長のような人工知能が最適な人員配置や評価もできるようなシステムを実現するためです。
今後なくなると言われている職業10選」「時代とともに消えた職業」という記事でも紹介したように、そのように人間の仕事が人工知能に置き換えられ、人工知能の進化・発達によって、既存の職業の半数が「奪われて」いくことはたしかです。
正確性が必要だったり、単純作業やマニュアル化しやすい仕事、システム化することで計算、算出できるような仕事、データなどを蓄積管理するような仕事などはなくなる可能性が高いと言えるでしょう。
それに対して、人工知能の発達した未来において、新しく生まれるであろう職業も数多くあると予想されます。今回はそのことについて紹介したいと思います。

人工知能ができることとは

人口知能技術の発達はめざましく、たとえば、人工知能の画像認識能力は、すでにとっくに人間を超えています。かつて画像認識は人間でなければ難しいと言われていたのですが、ディープラーニングによる進化によって、あっさり通説が覆えされてしまったのです。
機械学習をベースとした人工知能は、次のような作業をすることが可能になると言われています。

  1. 識別
    • 情報の判別・仕分け・検索(言語、画像ほか)
    • 音声、画像、動画の意味理解
    • 異常検知・予知
  2. 予測
    • 数値予測
    • ニーズ・意図予測
    • マッチング
  3. 実行
    • 表現生成
    • デザイン
    • 行動の最適化
    • 作業の自動化

「識別」「予測」の領域はすでに実用段階に入っていますが、「実行」の領域はまだ課題が多く、これからの部分です。しかし、技術が進化すれば、近い未来にその課題も解決されると予想されています。
こういった3つの領域での人工知能が十分に「使える」ということになれば、さらなる効率化=自動化のために、意思決定そのものを人工知能に任せることになるのは時間の問題でしょう。
その中で課題になるのは、人と機械をどうマネジメントするかという観点です。
人工知能に対して正しく質問すること、人工知能がデータを理解し、正しい解を導き出すように枠組みをつくることが必要になるのです。

人工知能時代に新しく生まれる職業とは

英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授によれば、2020年代の中ごろから人工知能革命が急速に始まるとされています。
米国労働省のデータを分析した2014年の発表では、今後10~20年で(つまり2024~2034年)で、702ある職種におけるアメリカの労働者の約47%の仕事が人工知能によって自動化される可能性が高いという結論でした。

当サイトでも繰り返し紹介してきたように、人類の歴史はイノベーションと改善の歴史であり、なくなってしまった職業は数多く存在します。しかし同時に、新たな仕事とそれを網羅する職業が誕生してきました。
電卓の登場によってそろばん塾は激減し、その電卓も表計算ソフトによって駆逐されました。なくなっていく職種もありますが、新しいものを教える人も必要になります。新しい技術が出現すれば、それに伴った新しい職種、新しいビジネスが生まれます。人間はその時代ごとに新しいものを発明し、使い方を学んできたのです。
たとえば、飛行機という空飛ぶ機械が生まれることによって、その飛行機を操縦するパイロット、メンテナンスを行う整備士、国家間の移動を取り締まる税関、飛行機に乗る乗客をサポートする客室乗務員、飛行機の運航を監視する管制官など、多数の職業が生まれました。
失われていく職業に目を向けるのではなく、これから生まれてくる職業に目を向ける必要があるのです。

たとえば、この何年かだけでも、新しい職業が生み出されていることをご存じでしょうか。

電通の「日本の広告費」によれば、総広告費が横ばいで推移する中、従来の旧メディア(新聞・テレビ・DM等)の広告費がインターネット広告費に振り替えられています。その規模の増加率は2014年から3年連続で10%を超え、2016年には1兆3,100億円、7年後には2倍の市場規模になると予想されています。中でも、「動画広告」は2015年から2022年には約5.4倍に上昇し、2,918億円に達すると予想されています。
そこで注目されたのが、ダイレクトに世界へ映像配信できる自分専用のメディア「YouTube」です。
小学生男子の将来の夢である「YouTuber」は、サッカー選手や医師に次ぐ第3位の人気職業です。YouTuberという職業は、インターネット回線速度の高速化、スマホの普及率の向上、マスメディア離れといったテクノロジーの進化によって新しく生まれた仕事なのです。
世界一で最多のYouTubeのチャンネル登録者数を誇っているのが、イギリス在住のPewDiePie氏というスウェーデン人のゲーム実況者。ゲームの実況から動画の編集までほぼ1人で作業をしている彼のチャンネルのゲーム実況を、日本人口の半分に当たる5,600万人という人々が視聴しています。年収は17億円。登録者数は年率20%のペースで伸びているそうですです。
他にも、2022年度には約4倍の2,116億円に達すると予想されているドローン市場でも新しい職業が生まれています。たとえばプロのドローン操縦士は、空撮1本で50万円から100万円の報酬を得ています。年収数千万円を稼ぐ操縦士もいるそうです。
他にも、3Dプリント印刷業者仮想通貨通貨アドバイザーなど、次々と新しい職業が生まれていますし、ナノテクノロジーロボット工学などの分野を中心に新しく仕事が生まれていくという予想もあります。

すでに現在でも、データサイエンティスト人工知能の領域に精通したエンジニアは慢性的に不足しています。今後、データサイエンスは理系学生にとって必修に近い領域になるだろうと言われているほどです。
今後、企業や家庭に普及していくであろうロボットの働き方をサポートするロボットアドバイザーや、企業におけるコミュニケーションの専門家として、価値観や文化を共有し、そこで働く人材に「自分はいま、ふさわしい場所にいる」と感じさせる企業文化エキスパート、自動運転の普及後に輸送課題を分析する輸送アナリスト、人工知能社会で働く人々のない内面的な課題を解決するマインドインストラクターといった職業が登場するかもしれません。

人間のやることが減り、早く家に帰れるようになったら、時間の大半を費やす「趣味」の先生が必要になるかもしれません。娯楽のひとつであるユーモアが重視され、人工知能にユーモアを与えるユーモアエンジニアのような人々が必要とされるようになるかもしれません(「ペッパー」の開発には現に吉本興業が協力しています)。今までとは求められるものの質が変化するのです。

「仕事を奪われる」という感覚から、「人工知能という新しい技術にキャッチアップすることによって新しい仕事を手に入れる」という仕事の進化として考えるべきではないでしょうか。
人工知能が人間より賢くなるシンギュラリティの実現は2045年と言われていますが、まだまだ不透明です。
碁の世界チャンピオンになったプログラム「AlphaGo」は、決して知性の面で人間を上回っているわけではなく、単に「碁」という限られた領域で人間を上回っただけです。「AlphaGo」に人間社会の課題や人間が幸福になるための解決策を問うても、答えてくれるわけではないのです。
そういったことに取り組むことのできる究極の汎用人工知能(AGI)が登場するまでは、人工知能は人間の労働を高度にサポートする存在、つまり人間の負担を減らし、生活を豊かにしてくれ、さらに新たな仕事を生み出してくれる道具なのです。

人工知能時代に人間が磨くべき能力

これから人工知能とともに働くことになる私たちは、人工知能が創出する「今はまだない職業」に適応するためにも、人間としての強みとして、様々なトレーニングによってスキルを磨いていく必要があるでしょう。

  • クリエイティブな能力
    問題は何かということを特定するための枠組みや、新しいコンセプトをデザインする能力です。斬新なアイデア、逆転の発想、新しい組み合わせを着想し、通常では発想に至らない仮説を導き出すひらめき力です。
  • マネジメント能力/コミュニケーション能力
    人間は相互に、複雑でデリケートなコミュニケーションを日々行っています。人々を奮い立たせて勇気づけ、目的へと導き、目標を達成させるための意識づけなど、意識に働きかけて人を動かすマネジメント能力は、人工知能やロボットを動かしていくためにも必要になるでしょう。
  • 課題解決能力
    人が感じる潜在的・顕在的な困難から逃げずに向き合い、それを自分ごととして解決していくソリューション能力です。

人工知能の発達により生まれる、今はまだない職業とは何か まとめ

日常や職場、旅行先などのあらゆる場面に人工知能が普及する未来は、おそらく遠いものではないでしょうけれども、何がどのように自動化されていくのかは、今は想像しきれません。
しかし、人工知能は人間の仕事を奪うだけのものではないということを理解していただけたかと思います。
私たちが考えるべきことは、「人間対機械」という戦いを防ぐことではなく、人間と機械がどのように協力できるかということです。

人工知能や機械による自動化は、労働者の生産性とクオリティーを向上させる。なぜなら、それによって労働者が自身の技術を補うことができるからだ。そして、そのような自動化によって、最も注意すべき部分に労働者が意識を集中させられるようになる。

(ウォール・ストリート・ジャーナルの記事より)