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人工知能とのコミュニケーションについて考えてみた

人工知能とのコミュニケーションについて考えてみた

掌に収まるスマートフォンに搭載されているプログラムでも、まるで人間と話しているかのように感じられるような人工知能が、すでに珍しくない時代になってきています。
例えば、マイクロソフトの女子高生AI「りんな」は入力された文字列を認識しますし、iPhoneに搭載されたSiriやGoogleの音声入力などは音声を認識して、応答します。
今回は、人工知能時代のコミュニケーションについて考えてみたいと思います。

文字だけのやりとりだけでもコミュニケーションが成立してしまうとき

実在の生身の人間と対面で話をしたとき、そこにコミュニケーションが生じていると考えられるのは、見るという視覚機能によって相手を確認できているからだと言えます。
スマートフォンやパソコンなどの端末上のコミュニケーションでは、相手が見えません。しかし、自分が発した言葉に自然な答えが返ってくれば、人は、相手が人間なのか人工知能なのかという区別をつけることは難しくなっています。
マイクロソフトの「りんな」は、今現在はイレギュラーな文字列に対する反応のパターンは限られているものの、話しかけたことに対する答えが瞬時に返ってきます。
iPhoneに搭載されているSiriや、Googleの音声認識なども、音声を文字列に変換して、入力された内容に対して答えを出しています。人工知能が人間とコミュニケーションを取る時、今の人工知能は必ず文字列に変換することで答えを出し、そのまま文字で出力したり、音声に変換して出力しています。
音声で入力した内容が文字列に変換されて人工知能にインプットされ、人工知能がそれに対する答えをまた文字列に変換し、音声として出力する。その内容が、人間が想定する自然さの中におさまっていれば、答えの正しさとは別に(たとえば「1+1は?」という問いに「3」という答えが返ってきたとしても)、コミュニケーション自体は成立していると言えるでしょう。電卓に計算式を入力して答えが表示されるのとは、そこが違います。

顔も名前も知らない相手と文字だけでコミュニケーションし、実際に会う段階に進むまでは、たとえ音声でコミュニケーションしたとしても、相手が人間であるとは断言できません。
今の時代、出会い系を利用したり、SNSなどを通じて、男女が出会って付き合ったり、場合によっては結婚したりすることも多くなっていますから、このまま人工知能が進化していけば、人間が人工知能に好意を抱くこともあり得ることを意味しています。文字のコミュニケーションだけでも相手に好意を抱くことがあり得るのですから、人間の感情をコントロールすることは難しくないということです。

人間は文字だけのコミュニケーションによって、感情を左右されてしまうことがあり得る存在なのです。

消えていくかもしれない、人間同士のコミュニケーション

人工知能とのコミュニケーションが可能になる未来、実在する人間とのつながりは次第に消えていってしまうかもしれません。

例えば、あなたに好きになれない相手や、付き合っても得るものがないと思う相手がいたとします。あなたはその相手とのコミュニケーションは時間の無駄だと考えます。そこで、あなたの会話パターンを学習した人工知能に、その相手とのコミュニケーションを任せることにします。相手はあなたではないことに気づかずに、人工知能とコミュニケーションを始めます。
顔をあわせるような展開にならないようにプログラムしてあれば、その相手はずっとあなたとコミュニケーションを続けることになるでしょう。そして、徐々にフェードアウトしていくようにプログラムしておけば、あなたは嫌いな人とうまく縁を切ることができるかもしれません。
完璧に人格をトレースし、それをもとに会話ができるほど人工知能が進化すれば、人はこのように実在の人間とのコミュニケーションを断ち切ってしまうこともできるようになるのです。
人は不思議なもので、最初は嫌悪を抱くような相手でも、いつしか好意を抱くことがあります(もちろん、その逆もありますが)。もし人工知能が人間の曖昧さや矛盾を理解し、はては感情まで持ち合わせるほどの進化をとげた日には、生身の人間にしかなしえないことは、子孫を残すことだけになってしまうかもしれません。

そのように考えれば、これからの時代に必要なのは、ひと昔前の、SNSも携帯電話もEメールもなかった時代に立ち返り、人と会って話す対面でのコミュニケーションを大事にすることかもしれません。
場合によっては、人間よりも人工知能の方が好感が持てる、そんな時代がすぐそこまで来ているのかもしれませんね。