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「機械学習」で一気に実用化に向かう人工知能の最前線

長い間人類の夢にすぎなかった人工頭脳は、今、機械学習という技術の進化によって、急速に実用化に向けて動き出しつつあります。
機械学習、ディープラーニング、ニューラルネット、ビッグデータ、IoT…報道などで断片的に耳にするこれらがどのように人工知能に関係しているのか、この記事でご説明します。

機械学習とディープラーニング

まず、現代の人工知能を語る上では欠かせない「機械学習」、そしてその機械学習の最先端である「ディープラーニング」について説明します。

従来のコンピュータは、人間が記述したプログラムによって動作するものでした。つまり、正しい答えが導き出されるかどうかは、そのプログラムを書いた人間にかかっていたわけです。
ところが、機械学習では、プログラムを書くのは人間ではなく、機械、すなわちコンピュータそのものです。機械が自分で学ぶので「機械学習」と呼ばれるわけです。もちろん、コンピュータはいきなり学ぶことはできません。最初の段階では、データに対する答えが何かということをコンピュータに教えてやる必要があります。これを反復的に繰り返すことで、コンピュータはそこからパターンを抽出することができるようになります。これが「学習」です。コンピュータがパターンを抽出できたら、その後はそのパターンにしたがって、人間の手を借りずにデータに対する答えを出すことができるようになるわけです。

これは、人間が子どもにものを教えていく過程に似ていると言えます。赤ん坊にものを教えるときに、人はなぜそれが正しいかということをいちいち解説したりなどはしません。ひとつひとつの行動に対して、これは良い、これは間違っているということを根気よく繰り返すだけです。赤ん坊は次第に、どういう行動が正しく、どういう行動が間違っているかということを経験的に学んでいくことになります。
機械学習もこれと同じ仕組みが用いられているわけです。

機械学習では、データに対する処理を教え、それをパターン化して自動的に処理できるようになります。しかし、単純な処理だけでは実用的なものにはなりません。そこで、この処理を複雑な階層的なものにしていくことによって、複雑な判断が可能になります。
たとえば、画像の中に特定の人物の顔が含まれているかといったことを判断できるようになるわけです。そのような階層的で複雑な学習をディープラーニングと言います。

ディープラーニングを可能にするのは、データを与えて、階層的な処理を行うことで正しい答えを導き出すニューラルネットと呼ばれる計算のアルゴリズムです。ニューラルネットは人間の脳を模倣したモデルです(詳しくは、「人工知能はどのように人間の大脳皮質を模倣しているか」という記事をごらんください。

ビッグデータの登場で機械学習の精度が上がった

機械学習にせよ、ディープラーニングにせよ、アイディアとしては1990年代から研究者の間にあったもので、特別新しいものではありません。しかしそれが夢物語で終わっていたのは、コンピュータの処理能力がまったく足りなかったからです。また、実用的な処理を行うための十分な量のデータもありませんでした。

今、機械学習、ディープラーニングの精度を高められるようになったのは、コンピュータがかつてないほど速く、安く、強力な並列処理を実現できるようになったことと、「ビッグデータ」が登場したことによります。無限のストレージ、そしてあらゆる種類の膨大なデータという2つの重要な要素が同時に登場したわけです。

ビッグデータについては、2010年頃からニュースなどで話題になりはじめたもので、ご存じの方も多いことと思います。
日々膨大に生成・記録される時系列性・リアルタイム性のある巨大なデータで、今までは管理しきれないため見過ごされてきたそのようなデータを解析することによって、これまでは見つけることができなかった新たな仕組みやシステムを発見できるようになりました。

こうした巨大なデータは、従来のデータベース管理システムなどでは解析はおろか記録や保管も困難でした。
しかし、コンピュータ技術の発展、そして機械学習が実現することによって、それができるようになりました。機械学習の中でも、ディープラーニングの手法によって、 データの特徴をより深いレベルで学習することによって、非常に高い精度で特徴を認識できることができるようになったのです。

ビッグデータの登場が人工知能を変えるとともに、人工知能がビッグデータに大きな意味を与えることになったわけです。

「IoT(Internet of Things)」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。
これは、そのまま訳せば「モノのインターネット」ということになります。
テレビやデジタルカメラ、デジタルオーディオプレーヤー、HDレコーダーといった情報家電をはじめ、家でもオフィスでも、もしくは街の中でも、今やほとんどの「モノ」がインターネットに接続しています。その結果、世界中にはりめぐらされたインターネットによって、あらゆる「モノ」がコミュニケーションをするための情報伝送路に進化しつつあるのです。そこで通信されるデータ量は膨大なもので、まさにビッグデータと言えるでしょう。「モノ」がセンサーで取得したこうしたビッグデータを、ディープラーニングによって瞬時に処理し、最適な形でフィードバックする……そんな夢のようなことが近い将来、いや、すでに部分的にはは実現しつつあるのです(「グローバル企業が実現しつつあるビッグデータ解析」という記事もご覧ください)。

たとえば、自分で話すことができる「Pepper」くんのような家庭用ロボットや、スマートフォンに搭載されているパーソナルアシスタント「Siri」「Google Assistant」などは、全世界のユーザーからの膨大な入力データを処理して、日々フィードバックする内容を変化させています。Siriが芸能人の話題まで把握していて、びっくりしたことがある人なら、そうしたすさまじい進歩を実感できるのではないかと思います。

まとめ

ディープラーニングによって、人工知能が実用的に応用される可能性が一気に実現味を増しています。あらゆる分野で人工知能による支援が可能になると見られています。無人自動車、より予防効果の高い医療などが、実用化に向けて走り始めているのです。

人類はかつて産業革命を経験しています。蒸気機関の出現によって、社会は大きく変わりました。
人類の歴史は今やSFの世界に入りつつあるのかもしれません。人工知能がもたらす革命は産業革命よりさらにもっと大きなものになるかもしれないのです。人工知能は自分自身でより優秀な人工知能を生み出す可能性があるからです。
この新しい現実に目を向けて、社会や経済をどのようにしていくか今こそ考えなければいけないのかもしれません。