私の仕事がなくなるとき|仕事の価値、本質、業界の未来像を浮き彫りにするメディア

仕事の価値、本質、業界の未来像を浮き彫りにするメディア

仕事の価値、本質、業界の未来像を浮き彫りにするメディア

グローバル企業が実現しつつあるビッグデータ解析

グローバル企業が実現しつつあるビッグデータ解析

急速にデジタル化が進んでいる現代では、あらゆるものが様々にデータ化されています。マーケティングに活かすためのビッグデータという言葉も聞かれるようになりました。このビッグデータは、どこから得るのでしょうか。またどのように分析することで役立てることができるようになるのでしょうか。

IoTで爆発的に増えるデータ量

IoT(Internet of Things)とは、「通信機器を備えた様々な対象物によって構成されるネットワークで、それぞれが内部状態や周辺の環境を通信・対話し合えるもの」と定義しています。「様々なモノに付けたセンサーからデータを収集・活用する仕組み」とでも言えばいいでしょうか。

典型的には、今やだれもが持っているスマートフォンです。これらは位置や傾き、加速度、明るさなどを測る加速度センサーを備えています。同じようなセンサーは、自動車、家庭、オフィス、工場、それに様々なインフラで使う機器に使われています。ウェアラブル機器、ロボット、自動車、住宅、家電、医療機器、工場設備、都市インフラ設備等々、さまざまなものが対象となるでしょう。

IoTでは、これらのセンサーと、データをやり取りするネットワーク、大量のデータを収集・活用するコンピューティング環境を組み合わせて活用されます。

たとえば農業機器大手のクボタでは、米の収穫に使うコンバインに50個のセンサーを搭載しています。センサーで取得した「平均タンパク」などのデータは無線LANと専用スマートフォンを介してクラウドサービスに送られます。世界各地にあるコンバインから収集されたデータにより、世界のどこで収穫量が高く、うまみのある米を作られているのかを把握することができ、農業上の投資計画に役立てることができるわけです。

また、日本航空は従業員が着けるカードにセンサーを取り付け、誰と誰が一緒にいたのかを把握できるようにしました。全従業員のデータをデータセンターに集めて分析し、従業員のコミュニケーション状況を可視化して、働きやすさの向上に活かすという取り組みをしています。

爆発的なデータ量を扱うための人工知能

上記の例のように、全世界のコンバインのデータや巨大企業の全従業員のデータなど、IoTが扱うデータ量は巨大なものになります。全世界のデジタルデータの規模は、2年ごとに倍増し、2020年には44兆GBに達すると予想されています。いわゆるビッグデータの時代が到来しようとしているのです。
こうしたビッグデータは、もはや人間の手に負えるものではありません。不可能ではありませんが、コストを考えると、人工知能を使うことが当然求められます。
そこで、IoTで多種多様なデータを取得し、人工知能がそれらのデータを効率よく活用するビッグデータ活用の仕組みが実現されつつあります。

人間が人間らしい言動や振る舞いができるのは、ものごとを「学習」する能力を備えているためです。そのような「学習」をコンピュータができるようにするということが機械学習です。
この「学習」とは、大量のデータからモデルを抽出し、それをブラッシュアップすることです。これにより、まだ学習させていない問いを投げかけても、それまでに抽出したモデルによって、答えを出すことができます。非常に単純化した例で言うと、過去の天気と売上データを学習させておけば、ある日の天気を入力することでその日の売上予測を出力できるようになるわけです。
実際の売上データは、天気だけに左右されているわけではありません。つまり、どのようなデータを学習させるかが大きな問題です。正しい判断を下すためのデータが学習されていなかったり、間違ったデータを学習していたり、一面的なデータしか学習していなかったら、正しい答えにいたることはできないわけです。これは人間であっても同じことですね。しかし、これらがすべて適切であれば、人工知能は人間を上回る精度で正しい答えを導き出すことが可能です。

ソフトバンクグループの孫正義社長は、
「IoTとAIの関係は、目と脳の組み合わせが生物の進化を加速させたのと同じ。カンブリア爆発のように、IoT爆発(エクスプロージョン)が起こる」
と予言しています(孫社長がARM TechConで講演、「1兆のIoTが人類の進化を加速」(ITpro)
感情認識ロボットとして注目されているソフトバンク社のペッパーくんは、人と接して会話をすることで、学習機会を増やし、クラウド技術を用いてロボットの経験を高めています。ここではペッパーくんがThingsのひとつとなり、ビッグデータを収集し、センターで分析がされて、ふたたび個々のペッパーくんにフィードバックされているわけです。

グローバル企業が実現しつつあるビッグデータ解析 まとめ

今後、企業では、自社の業務プロセスの中から「自動化・効率化できるとメリットがありそうな作業」を探すようになるでしょう。そして、自動化・効率化のために必要なデータをIoTで取得すればいいのです。
とはいえ、いきなり多大な投資をして、大きなプロジェクトで動き出すのはリスクが大きいでしょう。価値のある結論を導き出すためのデータサイエンティストといった分析のプロの育成も必要になってきます。
また、ビッグデータを分析して出した答えが、すでに現場では当たり前の経験知と同じだった、というような笑い話も今は少なくありません。とはいえ、「なんとなく感じられているような仮説」を検証するという目的でデータ分析を使うことは非常に有用でしょう。
IoTや人工知能はまさに今進化している途中ですし、十分な質・量のデータが集まるまでは、目標とする効果が得られない可能性もありますが、経営者にとっては、新たな事業機会の発見、新たな仕事の創出に結びつけるチャンスは数かぎりなくありそうです。